第60回日本手外科学会学術集会

ご挨拶

第60回日本手外科学会学術集会開催にあたって

第60回日本手外科学会学術集会 会長 平田 仁
名古屋大学医学部手外科教授

 第60回日本手外科学会学術集会を平成29年4月27日(木)・28日(金)の二日間に亘り名古屋市国際会議場にて開催いたします。名古屋大学は本学会をこれまでに3度担当させていただきました。第21回学術集会を中川正整形外科教授が、第31回を三浦隆行整形外科教授が、第46回を中村蓼吾手外科教授がそれぞれ名古屋の地で開催しています。今回が4度目となりますが、これは慶応大学と慈恵医科大学に並ぶ担当回数であり、大変光栄に存じています。

 手外科は第二次世界大戦後に始まった、医療の中では後発の領域ですが、atraumatic technique, microvascular/nerve surgery, functional reconstruction, biomechanics based approachなど多くの新風を医療界に吹き込み続けています。日本手外科学会(JSSH)は歴史と規模の両面で米国手外科学会(ASSH)に続く地位を占めており、先達の弛まぬ、そして一方ならぬご尽力により常に世界をリードし続けて参りました。今世紀に入り目まぐるしく動き始めた医療制度改革の流れにも素早く対応をし、中村蓼吾、三浪明男、佐々木孝、落合直之の4名の理事長の強力なリーダーシップにより他に先駆けて専門医認定機構からsubspecialityのお墨付きを頂いたことは記憶に新しいところです。残念ながら政策の揺らぎに翻弄され、再び日本専門医機構という新たな認定機関からの認証取得を求められることとなりましたが、60年を経て頑健な体質を育んできたJSSHは何処よりも早く、適切にこの難局も乗り切るものと確信しています。

 一方で、人に例えれば還暦を迎え、組織として集大成期に入った感のあるJSSHはここに来てイノベーションの創出力低下という大きな課題に直面しています。会員数が3500名ほどに膨らむ中で会員構成の右方シフトが進行しており、最も活力に満ち溢れる40前後の会員が活躍する場が年々減少しています。寿命に定めのあるヒトと異なり学会は営々と引き継がれ、発展していく必要があります。そのためには次世代のリーダーを育み、彼らに新風を吹かせることが不可欠です。こういった背景を思い今回のテーマを「新たなフロンテイアへの挑戦」とし、企画の多くを35歳から55歳の会員に託することと致しました。有望な若手を広く発掘するため第59回学術集会終了後に代議員各位に若手の推薦をお願いし、160名ほどの候補者に関する詳細な情報をいただきました。これらの人にできる限り多くの活躍の機会を設けるため過去最大となる10会場での編成とし、それぞれ9つずつ企画したシンポジウム、パネルに加えて主に45歳以下の会員で構成するYoung Leaders Symposiumも8つ準備しました。若手会員を対象とするユニークな企画としては学会初日の夕方に展示会場で一斉開催するラウンドテーブルもあります。この企画では発表者は15分の時間を与えられ、聴衆を巻き込んだ公開討論形式で持論を展開してもらいます。教育研修講演も19を予定しましたが、講師の大半を55歳以下の会員に依頼することとしています。これらの企画に選ばれた会員にはシンポジウムやパネルでは失敗を恐れず、若者らしく熱く持論を展開して頂きたいと願っています。一方で、教育研修講演を担当する方々にはしっかりとEBMに基づく教育的な講義をして頂き、今後の専門医制度の充実に貢献して頂きたいと考えています。

 JSSHの今一つの課題として「他領域との融合の遅れ」が挙げられます。専門医制度の充実は副作用として不毛な縄張り意識を育むことがあります。過去の成功に囚われて領域を定義することで自らを矮小化し、眼前に広がる大きなチャンスを見落とすことがあってはなりません。時代は激しく動いており、10年前には夢想だにしなかったことが次々と現実になっています。再生医療技術や人工知能の研究は急速に発展しており、多能性幹細胞からの臓器製造や完全自動運転車など地平線の遥か先にあると思われていた技術がすぐ手の届くところまで近づいてきました。ロボットの課題も歩行・姿勢制御から認知行動制御へと急速に移り変わっています。このような中で人類が発展するゆるぎない基盤となった上肢、とりわけ手というユニークな器官が多くの先端領域の研究者の興味を引きつけています。このフロンティアに歩み出すに際し彼らは我々手外科医に熱い視線を送っています。今こそ学会を挙げて彼らと深く交流すべき時ですが、残念ながら現在のJSSHにその息吹を感じることはありません。そこで理事会にお願いをし、国内外からallogenic tissue transplantation, regenerative medicine, robotics, neuroprosthesis, artificial intetlligenceなどで世界をリードする研究者を招請し1st International Symposium on Intelligent Functional Reconstruction of the Hand(IFRH)という国際学会を同時並行開催することとしました。60回学術集会参加者には1st IFRHへのフリーアクセス券を配布しますので、この機会を最大限に活用し、先端研究に一人でも多くの会員に触れていただき、大いに触発されていただきたいと思います。

 最後に、手外科は手外科医だけで完結できる領域ではありません。良好な機能を回復するには後療法が大切であり、他のどの領域よりもチーム医療が重要な分野です。今学会では第29回日本ハンドセラピー学会会長の茶木正樹先生と早い段階から共同して準備を進め、医師とハンドセラピストがともに参加する企画を極力増やすようにしています。Hand-in-Handとのキャッチコピーを付けてパネルやシンポジウム、チームディベート、あるいはラウンドテーブルといった企画を沢山共同開催します。

 名古屋大学は整形外科の中に手外科グループが生まれてから49年が経過し、また、2001年に本邦初の手外科学教室を開講して16年目を迎えました。お陰さまで同門の数も三桁の大台に乗り、講座に付随する形で2つの産学共同研究講座と一つの寄附講座も整備され、更に発展を続けています。第60回学術集会を担当させて頂くことは我々にとり光栄の極みであり、現在名古屋大学手外科同門会をあげて皆様をお迎えすべく鋭意開催準備を進めています。多数の皆さまのご参加をお待ちしています。